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弊社の親会社である、日東紡績株式会社と千葉大学医学部附属病院(病院長:齋藤 康 以下千葉大学)は平成18年5月1日より3年間に渡り、「疾患プロテオミクス寄付研究部門」を設立しております。

このコーナーでは、本寄附研究部門の統括責任者である野村文夫教授に『臨床検査に向かう疾患プロテオミクス』との題で4回にわたり連載いただきます。

第3回 臨床検査に向かう疾患プロテオミクスその3

2008年5月23日

野村文夫 千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学教授
千葉大学医学部附属病院検査部長
千葉大学医学部附属病院疾患プロテオミクス寄付研究部門長

4.SELDI-TOF MSを用いた臨床検査の可能性

Discovery Proteomicsに先鞭をつけ、SELDI-TOF MSを用いて卵巣癌診断に関して驚異的な感度・特異度を報告した 2002年のPetricoinらによるLancetの論文9)に対しては、その後 Nature16)、JNCI 17) などの誌上において活発な議論がなされた。 実際にSELDI-TOF MSを導入し、体験してみると、このテクノロジーはまとまった数の臨床検体を用いたmarker discoveryでは 強力な武器となるが、個々の臨床検体に臨床検査として応用するには検体の種類(血清or血漿)、採血条件、検体保存、同時再現性、 日差再現性、ロット間差、施設間差など多くの課題がある18)。施設間差については米国のNCIが中心となり、SELDI-TOF MSを 利用した前立腺癌のプロテオーム解析の施設関連携の成果が公表されている19) 。

国立がんセンターの研究グループはSELDI-TOF MSの質量分析部分をより高性能の機器に代えた手法により膵がんの バイオマーカーの検出に成功し20)、臨床検査への応用を視野に入れた多施設臨床試験が進められている。

また、SELDI-TOF MSはアッセイ系に用いる抗体の選別においても威力を発揮し、 骨粗そう症の新しい血液マーカーとして注目されているTRACbの測定系の確立にも貢献した21)

一方、SELDI-TOF MS, MALDI-TOF MSはあくまでmarker discoveryの手段として用い、marker候補の抗体を利用した測定系を構築するアプローチも当然ある。 しかし、deep proteome構成成分は既知蛋白の多種類のフラグメントから構成されている上に、翻訳後修飾を受けていたりして 目的物質のみを捉えられる特異抗体の作成は容易でないのが難点である。したがって、抗体と質量分析計を有効に組み合わせた Immuno-MSの発展が期待される。

文献

  • 9.Petricoin EF, et al: Lancet(2002) 359: 572-577
  • 16.Check E: Nature (2004) 429:496-497
  • 17.Liotta LA, et al: J Natl Cancer Inst (2005)97:310-314
  • 18.Hsieh et al: Proteomics 6:3189-3198, 2006
  • 19.Semmes OJ, et al :. Clin Chem (2005)51:102-112
  • 20.Honda K, et al : Cancer Res (2005) 65:10613-10622
  • 21.Ohhashi T, et al : Clin Chim Acta. (2007) 376:205-212.